今のわたしが過去を決める。「幸せになる勇気」感想2

先日1こ感想文書いたのですが、

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 やっぱりもっと書き留めておきたいことがあったので書きます。1つの記事でまとめられん。あと自分がぐぐって思ったのですが、こういう本のネタバレ(っていうか内容について触れること)ってみんな嫌がるの?私はむしろ内容が事前にわかった方がいいのだけど。とりあえず今回も引用ありますので希望されない方はお気を付けください。

目的論

 さて前作でもすごく腑に落ちて、いいなぁと思ったアドラーの考え方で「目的論」があります。人の言動には必ず目的が隠されているっていうやつ。

過去にどんな出来事があったとしても、それでなにかが決定されるわけではない。過去のトラウマも、あろうとなかろうと関係ない。人間は、過去の「原因」に突き動かされる存在ではなく、現在の「目的」に沿って生きているのだから。

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 上の記事では独自に「全部必要なこと論」と対比して(そこまで大袈裟な感じじゃないけども)書いてますが、アドラーの目的論が、それまで主流であった(のだろうか?)原因論に対して、非常に建設的で、前向きで、人間の可能性に希望を持っている感じがして私はとてもよく理解できたし、有効な思考法だと思いました。

 ただ、パブロフの犬みたいな話もあるし、

 ①原因があって目的が生み出される
 ②そして人は基本その目的に沿った言動をする
 ③ただしその目的というのは、自分の自由意思で決めることができる
 (だがしかし過去の色々な出来事がその自由意思に大なり小なり影響を与えている)

というのが実際のところなんじゃないかなーと私は思ってます(↑の記事内でも書いている通り、私はカルマの法則を信じてます。)。

 だから、過去に起きた出来事・原因もいち要因ではあって、だけどそれは今のあなたを本質的に縛るものではない(勝手に縛られている人はいるけれども)、というのが私の中の理解の落としどころです。ある意味人間の潜在能力に対する希望的観測も込められた思考法だな、と(というかアドラーは心からそう思っていたのでしょうけど)。*1

われわれは、過去のトラウマに翻弄されるほど脆弱な存在ではない。アドラーの思想は「人間は、いつでも自己を決定できる存在である」という、人間の尊厳と、人間が持つ可能性への強い信頼に基づいています。

点と点を線でつなぐ

と、この思考法について考えていると思い出されるのが、あの人のこの演説です。


スティーブ・ジョブズ 日本語で学ぶ伝説のスピーチ(字幕)

以前も取り上げたりしましたが。

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 スティーブ・ジョブズはこの中で3つ話をしますが、そのうちの1つで私がとても好きなやつが、「Connecting the dots:点と点をつなぐ」。これはまさに過去の出来事を、現在の自分が良い方向に、ドラマティックに意味づけしている話です。

 自分は養子に出されて育てられ、経済的・精神的(?)な理由で大学を中退した、しかし中退したおかげでカリグラフィを学べた。そのおかげで、10年後に開発したMacにきれいなフォントを搭載できた。WindowsMacのパクリだから、今のPCがきれいなフォントを持っているのは自分が大学を中退したおかげなのだ、とそういう話。

 そして彼はこう言ってます。「当時は点と点が見えなかったけれど、10年後に振り返ってみるとハッキリと見えた。未来に先回りして繋げることはできない。だから君たちも、いつか点と点が繋がることを信じて今を生きなければいけない」と。

 ここでジョブズは「今」から「未来」に向かって「いつか繋がる(繋げる)ことを信じて生きよ」と言っているけども、アドラーは「今」から「過去」に向かって「意味を与えよ(というか、事実として意味を与えている)」と表現しているのですね。ジョブズは事前のアドバイスで、アドラーは事後のアドバイスともとれるかな。

われわれは過去の出来事によって決定される存在ではなく、その出来事に対して「どのような意味を与えるか」によって、自らの生を決定している。

 ※余談ですが、このスピーチはスタンフォード大学で行われたものでして、スタンフォード大って、最新のランキングによれば世界で3番目の評判らしいですよ知らなかったけど。ちなみに東大は43位とのこと。上には上がいて怖いよぉぉぉ(´-﹏-`;)

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あなたの「いま」が過去を決める

 ジョブズのこの意味づけはとても前向きでドラマティックで、私は感動するのですが、アドラーに言わせれば、過去なんて存在しないらしいです。

われわれの世界には、ほんとうの意味での「過去」など存在しません。十人十色の「いま」によって色を塗られた、それぞれの解釈があるだけです。

歴史とは、時代の権力者によって改竄され続ける、巨大な物語です。

(略)

歴史のなかでは、つねに「いま」がいちばん正しいのだし、ある権力が打倒されれば、またあらたな為政者が過去を書き換えていくでしょう。

(略)

われわれ個人も同じです。人間は誰もが「わたし」という物語の編纂者であり、その過去は「いまのわたし」の正統性を証明すべく、自由自在に書き換えられていくのです。

 ここで、哲人は1つカウンセリングの事例を話してくれるのですが、幼少期~数年前までの記憶喪失が著しい私にはこの話結構ヒットしました。笑 いやほんと、人間の記憶って曖昧ですよ。私もきっと忘れていることや、誤って(正確には正誤はないのだけど)解釈していることがたっくさんある。*2

自分は犬に噛まれたのか。それとも他者に助けてもらったのか。アドラー心理学が「使用の心理学」とされる所以は、この「自らの生を選びうる」という点にあります。過去が「いま」を決めるのではありません。あなたの「いま」が、過去を決めているのです。

詳細はぜひ本で読んでください。

コネクティングザドッツ精神が大好きな私としては、過去は自分の解釈次第、という考え方は大賛成だし、みんなそう思えたらいいと思ってます。過去の恨みつらみに縛られて今と未来を浪費するんじゃなくて、これから(なんなら今すぐ)幸せになるために、過去をうまく使って前を向こうよ、って思う。

幸せになる勇気―――自己啓発の源流「アドラー」の教えII

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嫌われる勇気―――自己啓発の源流「アドラー」の教え

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スティーブ・ジョブズ 神の仕事術

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*1:その点で、私は本書の青年と近しい思考を持っているともいえるのだけど。

*2:だから、裁判の「自供」とか「証言」って、本当に証拠たり得るのか疑問ですよね。余談ですけど。